『大宮曼荼羅』は和紙製の障子プロジェクションマッピングによるメディアアートの展覧会です。

本展では、厚口の和紙を障子紙として複数重ね、プロジェクターの光が裏側に透過しにくい性質を持たせています。

この性質を利用し、障子の表と裏に異なる映像を投影することができます。

表には、さいたま市内の120の地名と伝説をイラスト映像化しており、障子の枠一つ一つにそれぞれ異なる映像が投影されます。

裏には、さいたま市の現在の風景をコラージュした映像を投影します。

このように過去と現在という相反する要素を同一の障子枠内で表現することにより、特徴がないと言われがちな、さいたま市のアイデンティティを時間軸から捉え直す試みです。

片面だけを使った障子プロジェクションマッピングは一般的ですが、両面に投影可能な和紙製障子プロジェクションマッピングは日本で初めての試みとなります。

これにより、鑑賞者は表現や土地の核の部分に触れることを通じて、自身の視野が拡がるような新たな体験を得ることができるでしょう。


☆陰陽太極図的メディア空間とは

私は、コラージュを用いた映像表現を通じ、展示地域が持つ歴史や文化を題材に、相反するものが共存した映像空間「陰陽太極図的メディア空間(後述)」を探求しつつ、メディアアート作品を発表してきました。

考えの発端は「動的平衡」とは生物学者の福岡伸一先生によって提唱された概念にありました。「動的平衡」とは「生命は変わらないために変わり続けている」ということを端的に表現した言葉です。例えば、私たちの体内の細胞は放っておくとエントロピー増大の法則に従い、朽ちてしまいますが、細胞は崩壊する前に自ら壊し、新しい細胞を作ることで、エントロピー増大の法則を先回りしているのです。東洋思想では同様の思想を「陰陽太極図」という図に表してきました。同じことは法隆寺にも言えます。日本最古の建築として知られる法隆寺ですが、建築当初からの部材はどこにも存在しません。少しずつ壊しながら補修し、法隆寺としての存在を保っています。つまり破壊と創造が同時に存在することで、存在を保っているのです。このように生命やあらゆる物事の本質には「相反」が潜んでいます。それとは別に私個人もこの「相反」に強い関心があります。私が「相反」に強い関心を持っていることに気づいたのは自己の好物を整理した際でした。好きな音楽は悲しい歌詞に明るい曲調のものであったり、好きな画家であるシャガールは明るい色彩で「死」を描いていたり、人生で最も好きな映画である岡本喜八の「血と砂」では明るい軍楽隊のメロディに乗せ「戦争の虚しさ」を描いています。このような私の「相反」への強い関心と「生命の本質は相反にあり」という言説が一致した時、脳が沸騰するような興奮を覚えました。そして「相反」の追求こそ、創作や人間存在の本質の一端に迫れるのではないか?美しいものを作れるのではないか?と思い、創作しています。

「相反」を的確に表現する手法としてコラージュを用いてきました。コラージュは普段ありえない事物を同一画面上に並列で存在させることが可能です。またコラージュは出来上がった世界観を切り張りすると定義すれば、空間・衣装・音楽等にもコラージュ的創作法は応用可能です。こうして出来上がった映像を「陰陽太極図的メディア空間」と呼称しました。よって今回も、過去と今という相反するものを共存させ、コラージュを表現手法として用いることで、さいたま市の本質の一端に迫りたいと考えております。鑑賞者も相反が共存した空間「陰陽太極図的メディア空間」を鑑賞することによって、表現や土地の核の部分に触れる体験ができれば幸いです。


☆タイトル由来(大宮曼荼羅)

曼荼羅は密教の世界認識を示した図のことを指しますが「大宮曼荼羅」とすることで、地域を表現した映像作品であることを示唆しつつ、多種多様なものが共存していることを表すタイトルとしてつけました。曼荼羅は悟りの本質を表したものでもあり「動的平衡的映像空間」とも合致します。


☆会場

盆栽四季の家。「盆栽四季の家」は、東角井光臣家(武蔵一宮氷川神社宮司)の居宅の一部を移築模写復元して作られた和風建築です。周辺には盆栽村や漫画会館(マンガの資料館)、大宮公園も徒歩圏内と観光地が点在しています。


当日会場へお越しください。こちらより事前の申込みもできます。


☆告知用SNS

Instagram

https://www.instagram.com/daigorere/

Twitter(X)

https://twitter.com/perfect_blue5


☆イベントチラシはこちら